人助けをしたら人気俳優との同居が始まりました

プロローグ

　想像してみてほしい。
　仕事を終えて帰宅したら、自分の家には絶対にいるはずがない、テレビでしか見たことがない人気俳優がいる光景を。

「な、な、なんで……」

　総合病院に勤務する外科医の高崎叶恵(たかさきかなえ)が帰宅すると、見慣れた自分の家のリビングのソファに、見知っているけれど見慣れない人物が鎮座ましましていた。

「こら、叶恵。人様を指差すのはやめなさい」
「いや、でも、だって」
「とにかく、そこに座りなさい」

　祖父のもっともな注意に、叶恵は空いているソファに呆然と腰を下ろす。
　彼の存在が気になってちらっと見ると、ばっちり視線が絡み合い、極上の笑みとともに声をかけられた。

「お帰りなさい、叶恵さん」
「あの、えっと、た、ただいま？」

　しどろもどろに答えたものの、彼を見ていられなくて、叶恵は慌てて目を背ける。
　夢でも見ているのだろうか。
　彼の存在をもう1度確かめたいけれど、また目が合うのは避けたい。
　ただでさえドキドキしているのに、もう1度目が合うなんて、とてもじゃないけれど心臓が持たない。
　だってそこに座っているのは、今一番といっても過言ではないくらい、人気も実力も露出もある、俳優の山内蓮(やまうちれん)なのだから……。