独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 勉強だってそもそも授業を聞いていなければ内容を理解できないし、スポーツだって全く練習してなければただ怪我をするだけだ。習い事だってコンクールで結果を出すには練習が必要に決まっている。人間関係ならば奏一の方がよほど社交的で人のことをよく見ていると思う。

「立ち直り方を知らないなら、私が慰めてあげるから」

 それでも響一と比べて『自分なんて』と思うのなら、結子がその気持ちを受け止める。やるせない気持ちを拾い上げる。愚痴を聞いて、慰めて、背中を押して、送り出してあげるから。

「だからちゃんと立ち直って、また頑張って」
「……うん」

 どこか安心したように微笑む奏一の頬を撫でると、その手に奏一の手が重ねられた。

 微かな温もりがじんわりと優しい温度に変わる。まだ新しい関係の二人は、こうして少しずつ分かち合っていけばいい。少しずつ歩んでいければいい。

 焦る必要なんてない。それがいつか本物の愛になるまで、幼くてつたない愛を重ね合っていけばいいのだ。

「結子のために頑張る」
「うん」

 奏一が感情を込めて誓ってくれる。結子に傍にいて欲しいから頑張ると言ってくれる。

 その誓約に頷き返すと、ふっと微笑んだ奏一が布団の中でもぞもぞと結子の身体を抱き寄せてきた。

 甘え上手な人だから、きっとハグかキスがしたいのだろう。――と思ったら違った。結子の予想は大外れだ。

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