独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 結子が響一に恋心を抱く理由は、何も奏一のいじわるから自分を守ってくれたからだけではない。響一は他人に対して強い口調で接することも多いが、根はとても優しい人だ。

 それに結子の知る響一は、どんなことにも前向きに励む努力家でもある。学業の成績も常にトップクラス、所属していたバスケットボール部では中学でも高校でもキャプテンを務めるほど運動神経が良く、リーダーシップも抜群だった。結子と同じピアノスクールに通い、コンクールでもいつも優秀な成績で入賞を果たしていた。

 その裏で響一が涙ぐましい努力をしていることも知っていた。有名ホテルグループの御曹司に生まれながらもそれを鼻にかけず、どんなことにもひたむきに打ち込んで、その努力に相応しい成績や称号を自分の手で掴み取る姿を見続けてきた。

 そんな響一に選ばれるために、結子も必死に努力して来た。勉強こそあまり得意ではなかったが、茶道に華道、琴にピアノ、英語・フランス語・ドイツ語のレッスンに通い、料理も洗濯も掃除も一通り完璧にこなせるようになった。もちろん社交界で浮かないために招待を受ければパーティにも積極的に参加した。今は仕事だってしている。

 なのに結局、響一には見初められなかった。

 その代わり、彼の弟が結子を花嫁にしたいと言い出した。もちろんまったく気乗りはしないけれど。

「はぁ……どうやったら断れるかなぁ」
「……え」
「お父さんも入谷のお父様もその気よね……」
「……結子、もしかして断れるつもりでいる?」

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