独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 彼の言う通りだ。密かに想い続けてきた響一が見合いの相手ではなかったからと落ち込むのは、結子の勝手な都合である。先ほどの口調から察するに奏一も結子の恋心には気が付いていたはずだが、それさえも奏一には関係のない話だ。

 佐山 結子の目の前にいるのは入谷 奏一である。他人は関係ない。今の結子が真摯に向き合うべき相手は、この場にいる彼なのだから。

「ごめんなさい……。そうよね、奏兄さまも政略結婚に巻き込まれたんだもんね」
「え……? あ、いや……そうじゃなくて」

 不満があるのは彼も同じだろう。政略結婚というのは本人たちの意思はあってないようなもの。家や会社のために望んでもいない婚姻を迫られ、好きでもない相手と結婚することを強いられる。

 けれどそれをおくびにも出さず、対外的には仲の良い夫婦として振舞わなければならない。

 奏一は入谷家のためにその提案を受け入れた。しかも本来ならば、イリヤホテルグループにとってより有益な会社の令嬢と結婚することも出来たはずなのに、彼は結子の父とブリリアントサヤマのためにこの政略結婚を受け入れたのだ。

 それなのに他でもない結子がいつまでもうだうだと悩んでいるわけにはいかない。

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