独占欲強めな御曹司は、溢れだす溺愛で政略妻のすべてを落としてみせる

 だがまたすぐに沈み込んでしまう。結子と目が合うと、視線を背けて『けど……』と口籠ってしまう。

「結子は元々、俺のことが好きじゃなかったから……それなのにあんな格好悪いとこ見せたら、もう……」
「……かっこ悪いわよ!」

 結子には奏一の言い分が理解できない。仕事のミスと結子との関係に相関はないと諭しているにも関わらず、同じことで悩む奏一に苛立ってしまう。

 だからココアが入ったマグカップをやや乱暴にテーブルに置くと、その場に立ち上がって奏一の姿を見下ろした。

 女性の結子から見てもずるいと思ってしまうほど整った顔立ちが、悲しそうに、切なそうに、苦しそうに歪む。その表情に胸が締め付けられる思いがしたけれど、それでも構わずに自分の言いたいことをぶちまける。

「今の奏一さん、本当にかっこ悪い!」
「……結子」
「なによ、仕事に失敗するぐらい誰にでもあるじゃない! 失敗したら反省して、見直して、改善して、またやり直せばいいだけでしょ? なのになんで私が嫌いになる話になるのよ!」

 否、奏一の考えが自分とは異なると、奏一の言い分には賛同できないと、きっぱり言い切る。

 そうでもしないと奏一がいつまで経っても同じところに立ち止まったまま、ずっと動けなくなってしまう気がしたから。

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