恋のチャンスは3日間

森下を自分の左側に抱き締めて、幸せな余韻に浸っている。

「なんか、言いたいこと沢山あるけど、今はただこうしてていい?」

今はただ、森下を抱き締めていたい。
思いが同じという今までにない、満たされた感覚。

それと同時に過去の俺の恋愛観に項垂れる。
本当に相手に失礼なことをしてきたのだと、思い知る。

「・・・はい」

返事と同時に森下が俺の体に腕を回す。

森下の柔らかい感触と香り・・・。

お、森下、まて。
それは・・・ちょっと、まてまて。

んー。
これはさ。
誘ってる?
・・・そんなわけねーか。

時計を確認すると、まあ一緒にいることが出きる時間は1時間10分くらい。

この時間では無理だよなー。
やっぱり、ゆっくりしたいしな。

森下の顎に触れ、少し上を向かせる。
涙は止まってるみたいだ。
少し赤くなった鼻と、ちょっとだけ腫れぼったくなった目にきゅんとする。

可愛い。

おでこにキスをすると止まらなくなる。
そのまま目蓋にキス。
赤い鼻にキス。
頬にキス。

そして、唇にキスをした。

はじめは軽く。
ちゅっ。
少し離してから、もう一回。
角度を変えて。

「少し口開けて」

素直に開けてくれた口にゆっくりと舌を入れる。
様子を見ながら嫌がらない程度に。
一生懸命答えようとしてくれる姿に嬉しくなる。

唇やわらけー。
すっげ、気持ちいいな。
少し夢中になると、

あ、やべ。反応する。

そこからは、もう自分との葛藤。
キスしたい。
してると、あ、やべえ、反応する。
の繰り返し。

天国か、地獄か。

終電の時間まで、話もあまりしないまま、自分と戦いながらもキスはやめなかった。


玄関で見送られる。
さっきとは全然違う。
森下の頭を撫でて、ちょっときつめに抱き締めて、ゆっくりキスをして。

「また明日な」

今までにない幸福感に包まれて、俺は森下のアパートをでる。

「はい、また明日」

森下はちょっとボーッとしてた。

やりすぎたか。
・・・まあ、大丈夫だろ。
自己満足なのかもしれないが、本当に幸せだ。


駅までの道のりの足取りは軽い。
電車のなかで、これまでの時間を思い出して、楽しくなって。
電車を降りてからの帰り道。

空を見上げると、月はやっぱり少し欠けていて、だけど明日は真ん丸になるだろう。

俺の気持ちも真ん丸だ。

明日もいつもと変わらない日々が続いていくのだろう。
だけど、俺の日々は変わってく。
きっと幸せな方向に変わっていく。
そうなるように努力しよう。

森下と一緒に。


完。

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