捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】

「そんな風にくっつかれたら、理性が……」

 私の視線から、何故か逃れようとするかのように、顔を僅かに横にずらしたレオンの耳は、心なしか紅くなっているように見える。

 レオンが口にした言葉の意図が掴めなかったものの、依然レオンに組み敷かれて密着しているのだ。

 レオンのある部分が通常とは違った状態であることが、否が応でも密着した身体を通して伝わってきてしまう。

「ーーキャーーッ!? ヤダッ! 放してッ!」

 仰天した私は悲鳴を放ち、大慌てでレオンの身体をドンッと力任せに突き飛ばす。

 けれども、この春、身長一五五センチにようやっと届いた小柄な私とは違い、おそらく、優に一八〇センチはあるであろう高身長のレオンに腕力で敵うわけもなかった。

 逆に、ぎゅぎゅうっと胸に抱き寄せられてしまい、耳元であの甘やかな声音で必死になって請うように囁かれてしまっては、力が抜けて、それ以上突っぱねることなどできない。

「ノゾミ、ごめん。落ち着いて。これはただの生理現象だから。大丈夫、大事なノゾミのことを欲望のままにどうこうしようなんてこと、僕は思っていないから。ね? お願いだよ。僕のことを信じて? ノゾミ」

 とはいえ、依然としてレオンのある部分は、自分が雄であることを誇示し続けている。

 なので半信半疑で聞き返した私の言葉にも、レオンはキッパリと言い切ってくれた。

「……ほ、本当に?」

「うん、本当だよ。神に誓ってもいい」

 そうしてゆっくりと私の身体を抱き寄せたままベッドから起き上がると、私のことをベッドに座らせて、何を思ったのか、私の足下で片膝をついて跪く。

 ーーえ? 何? どうしてそんなことするの?

 眼前で跪いてしまったレオンのことを吃驚眼で凝視したままでいると、不意に私の右手をそうっと包み込むようにして手に取り、自身の方に引き寄せ、手の甲にそうっと口づけてきた。

そうして一瞬の間を置いてから顔を上げたレオンが私のことを真っ直ぐに見つめつつ。

「信じて、ノゾミ。ノゾミが僕のことを好きになってくれるまでは、キスは勿論、さっきのようにノゾミに決して不快な思いなんてさせはしないと誓う。だから、僕のことを信じて欲しい」

 そう誓ったあとで、あたかも誓いでも立てるようにして、もう一度手の甲にそうっと触れるだけの甘やかなキスを落とすのだった。

 私はその様を夢現でぼんやりと眺めていることしかできないでいる。

 そんな私の足下に跪いたレオンの姿は、幼い頃に何度も読み返すほど憧れた物語に登場する王子様そのものだった。

 
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