捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】
助けてもらったというのに、礼儀知らずの私のことをおじいさんは気分を害することなく、ニッコリと微笑んでから再び口を開いた。
「ああ、わしとしたことが、ご挨拶が遅れて申し訳ございません。聖女様を召喚した王太子殿下チャールズ・アルガン様のお父上であられる国王陛下のアレクサンダー・アルガン様に、昔お仕えしておりました、精霊使いのルーカス・コレットと申しますじゃ」
「精霊……使い……? ですか?」
けれども、すぐに引っかかるワードにぶつかり聞きかえした私の言葉にも、ルーカスさんは、やっぱり柔和な笑みを絶やすことなく説明を始めた。
「噂によると、聖女様は異世界から召喚されたんでしたなぁ。まぁ、簡単に説明しますと、精霊使いというのはーー」
聞いてもよくはわからなかったが、精霊を召喚・使役する担い手のことらしい。
「といっても、もうとっくの昔に引退して、今はただの樵《きこり》ですがな。そしてこの二人は小妖精のフェアリーとピクシーと申しますじゃ」
そのあとで小妖精を紹介してくれて、この世界には、精霊使いの他に、魔法使いがいることも教えてくれた。
そのことに関しては、召喚されたことからも頷けたが、今お世話になっているルーカスさんの家がある精霊の森には、フェアリーとピクシーのような小妖精だけでなく、オークやゴブリンといった邪妖精も棲み着いているらしい。
愛読していたファンタジー小説にはつきものの邪妖精だが、実際に存在するとなると、途端に恐怖心を抱いた。
けれど、今いる家の周辺には、ルーカスさんによって結界が張られており、森の奥地へ行ったり夜間に出歩いたりしない限りは、それらが襲ってきたり、遭遇する心配はないのだという。
ホッと安堵したところで、私のことを召喚した王太子についての話題へと移っていった。
その前に、どうしてルーカスさんが私が異世界から召喚されたかを知っていたかというと、なんでも王都では、召喚された聖女様が追放されたという噂でもちきりなのだとか。
なので私を目にした瞬間、ピンときたらしい。