捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】

 それ以来、獣人らは海を超え遠い東の大国に移住するようになったことで、現在はその姿は見かけなくなったらしい。

 なので現在、実物の獣人を知らない人たちにとっては、恐怖の対象でしかないそうだ。

 それは、かつては狼を神聖な神として崇めていたという、レオンの故郷であるモンターニャ王国でも同じらしい。

 王家の血筋である貴族の家系に生を受けたものの、獣人の血を引く祖母からその血を受け継いだレオンの存在は、家族以外の使用人や周囲の人からは、忌み畏れられてきたようだった。

 それがさっきの誤解に繋がったようだ。

 そのことを話してくれていたレオンは、終始淡々と語っていたけれど、時折、綺麗な蒼い瞳を悲しげに潤ませていた。

 そういえば、以前にも、悲しげに『こういうことには慣れているから』そう言ってたことがあったっけ。

 きっと獣人の血を受け継いだことで、たくさん悲しい思いをしてきたのだろう。

 なんだか、聖女として召喚されたと思ったらいきなり追放されて、今では追われる身になってしまっている自分とが重なってしまい、切なくなってくる。

 胸がキュウーッと締めつけられるような心地だ。

 それと同様に、腹立たしい気持ちにもなってくる。

 見かけだけで判断するなんて酷すぎる。昔は神として崇めたり、仲良くしてたクセに、そんなのあんまりだ。

 そんな私の元に、レオンから優しい声音が届く。

「どうしてノゾミが泣くの?」

 そこで初めて、自分が泣いていることに気づかされた。

 けれども感情が高ぶってしまっている私は涙もそのままに、思ったことを放つのだった。

「昔は仲良くしていたのに、そんなの勝手すぎる。レオンはなにも悪くないのに。見た目だけで勝手に怖がったりして。そんなの酷すぎる」

 そうしたら、隣のレオンにふわりと腕の中に囲い込むようにして抱きしめられていて。
 
「ノゾミは本当に純粋で、とても心が綺麗だね。僕、やっぱりノゾミとは離れたくないよ。ねえ、ノゾミ。僕と一緒に隣国にきてくれないかな?」

 隙なく密着した互いの身体を通して、レオンのとびきり甘やかな優しい声音がじんわりと伝わってくるのだった。

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