捨てられた聖女のはずが、精霊の森で隣国の王子に求婚されちゃいました。【改稿版】

 私としては、あまりモテられても心配だし。クリスの側室になりたいと名乗りを上げる女性が出てくるんじゃないかとハラハラしていたのだけれど。

 幸いなことに、このモンターニャ王国は、側室制度を許していないということで、ホッとしたのが、三ヶ月が経った今ではひどく懐かしく思える。

 この三ヶ月の間、私がどうしていたのかというと。

 クリスの妃となるために花嫁修業に勤しんでいた。

 勿論、下着の開発だって継続中だ。

 王族御用達の仕立て職人に協力してもらって作成した『天使の羽衣』と名付けられた下着は、王都だけでなく、近隣の国から買い付けに来る商人の列ができるほどの人気商品となった。

 ということで、私は今や、元いた世界でいう、売れっ子下着デザイナーとなっている。

 ルーカスさんと小妖精であるふたりがどうしているかというと。

 任務のため、亡くなったことにしていた奥様の元に帰って、フェアリーとピクシーらとともに仲睦まじく暮らしている。

 住まいは王城の近くとあって、よく往き来しているため少しも寂しくはない。

 因みに、あの我侭王太子がどうなっているかというと。

 臣下である召喚師のお陰でゴブリンや魔物に捕まることもなく、王城に帰ることができたらしい。

 だが余りの恐怖で気が触れてしまい、政務はおろか日常生活にも支障を来しているらしかった。

 驚くことに、療養中だった国王陛下の体調不良も王太子の仕業であると判明し、直ちに王位継承権は剥奪され投獄。心優しいとかねてから評判だった弟である第二王子が王太子となったそうだ。

 現在は、心優しい王太子と元気になった国王陛下とが政務を担っているらしく、モンターニャ王国との関係も良好だ。

 それはさておき、実は今日、ここモンターニャ王国に来てからというもの、急ピッチで準備が進められてきた、クリスと私との婚礼の儀が厳かに執り行われた。

 今日をもって、私とクリスとは正式な夫婦となったことになる。

 夜を迎えた今は、まだ新居は王城の敷地内に建設中のため、王城にあるクリスの寝室のバルコニーで寄り添い合いキラキラと瞬く星空を仰いでいたことろだ。

 私はクリスの隣で、これまでのことをぼんやりと思い返していた。

< 95 / 105 >

この作品をシェア

pagetop