雪と虎

登下校は虎太朗が居ないので車だ。
帰る時は駅まで二人と一緒に歩いて、バイトがあるとか用事があるとか理由をつけて別れている。

「じゃあね」
「ばいばーい」

手を振る。二人が改札を抜けるのを見て、踵を返した。駅の反対側に行くと、いつもの車に沼西さんが立っている。

「おかえりなさいませ」
「……ただいまです」
「どうしました?」
「いえ。今日、眼科ですよね」

後部座席に乗り込み、尋ねた。

「はい、そんな嫌そうな顔しなくても」

ミラー越しに唇を尖らせたのが見えたのだろう。すぐに戻す。

< 18 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop