誘拐婚〜ある日、白無垢が贈られて〜
「とりあえず、仕事行くか」

仕事をしていると、花嫁道具のことも一時的に忘れられる。雅は気持ちを切り替え、朝ご飯を食べるために立ち上がった。



「部長!頼まれていた資料作りと取引先への取引先への確認の電話、終わりました」

「もう終わったの?水沢さん、相変わらず仕事早いね〜」

「いえ、他に何かすることはありますか?」

雅はニコリと笑い、次々と指示された仕事を片付けていく。後輩の質問に答えてアドバイスをしていくうちに、あっという間にお昼になっていった。

人から認められ、必要とされる会社での仕事が雅は大好きだ。仕事と趣味を楽しめたらそれでいいという考えのため、アラサーだが結婚に焦ることは一瞬たりともない。

「水沢、お疲れ。飯一緒に行かね?」

同じ部署で働く先輩の氷室計に声をかけられ、「はい!」と雅は返事をしてかばんを手に取る。

「どこに食べに行きます?」

「お前、海鮮系好きだったよな?おいしいお店見つけたんだ」

「やった!海鮮、大好きです」
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