美琴ちゃん、大丈夫?

「自分に害がないと分かってから態度が急変して突然尻尾振って遊んで遊んで〜って寄ってくる豆柴。」


「…ハッ。それだ!」


暖かな日が差し込むベランダ。

今朝の時山くんを例えるのにうってつけの答えを優花が出してくれた。


「それはつまり美琴は…?」


優花がアイス型のチョコをマイクに見立てて私に向ける。


「……可愛い。嬉しい。」


多分、本物の犬と違って、時山くんは噛まないし。

そして向けられたマイクを一口いただく。


「あーん!私のチョコ〜!」


「はい、どーぞ」


代わりに私のチョコパイを優花の口に入れてあげる。


「…んまんま。これぞ等価交換!」


一限目の授業が終わってから優花と2人、教室のベランダで日向ぼっこしながらおやつを食べてる。

今日もいい天気。

平和だな。

こんな毎日が続いたら幸せだなぁ。




「ニャーン」




「!」




「ニャー」




猫の声。



「ニャーン」





どこ?

…あ、庭の草むらにいる!

ん?

鼻の横に黒丸模様のついた三毛猫

…あの子、うちの近所で見た子だ!



「ニャーン」





「美琴?どした?」


「子猫が、学校に入ってきちゃったみたい」


「えっ?どこどこ?」


「ほら、あそこ。木の影」


「えー?」



なぜか見つけられない優花。


あの子、こんなところまで一匹で来ちゃったんだ。


こっちじゃないよって教えてあげないと…




…?



こっちじゃなかったら、どっち?




子猫の方へ行こうとすると、優花が腕を引っ張り引き止める。


「美琴、上履き!」


「あ…」


足元を確認して、下駄箱の方に行かなきゃと思ってもう一度顔をあげると


子猫の姿はもうなかった。


「…いなくなっちゃった。」


「んんー?全然見つけられなかったなぁ。わたくし視力には自信があるんですけど…おうちに帰ったのかなぁ?」



おうち…。

そうだといいんだけど。



あの子のおうちって、どこだろう?
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