振られた私を御曹司が拾ってくれました。

駿に恋人がいても、婚約者がいても、私には全く関係が無い事だ。
私は、ただの同居人で、恐らく駿は私のことを、女性としても見ていないかも知れない。
今朝のキスは、男友達と冗談でじゃれあう程度のことなのだろう。


分かってはいても、なんだか涙が溢れてくる。


本当はこの涙の理由を自分が一番わかっている。
だけど、分かってはいけない事なのだ。

でも、涙は正直だ…。私は駿に惹かれている。…いいや、好きになってしまっている。

涙が自然と流れる私を見て、美優が心配そうな顔をしている。


「琴音、…もしかして、氷室専務のこと…好きなんだよね?」

「ち…違うよ…絶対に違うから!」


私の様子を見て、美優は心配そうな顔で私を見つめた。
そして、何も言わず、ハンカチを差し出した。


「このハンカチ使っていないから、琴音にあげるね。可愛いでしょ…」


美優は笑顔を向けながら、そっと去って行く。美優の優しさだ。


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