秘書室の悪魔とお見合いをしたら〜クールな秘書と偽装結婚することになり、いつの間にか愛でられていました〜
――そして、そんな一夜の過ち(?)からほどなくして。
相変わらず意地悪な彼に翻弄されながらも、日に日に慌ただしくなってきた仕事へ身を投じていた、八月の半ば――。
彼の言っていた〝案件〟の片鱗は急に舞い込む。
「へ、そうなの?」
「そうなのって……あんた、知らないの?
……ここのところ、秘書室はその話でもちきりじゃない」
グローバル企業のうちに、お盆休みは存在しない。
ロッカーで身支度を整え、秘書室へ向かう朝イチの廊下。出勤時間の被った友子が、パーマの効いた髪を束ねながら顔を歪める。
「今回の商談相手のベンチャーの社長、もんのすごく厄介な人なのよ。関わりたくないけど、この仕事やってたらそうはいかなわよね〜」
「クリスが来日したのは、その人との取引きのためだって話しだったよね」
「そう。学友らしいわね。なんにせよ、今後、会食やら打ち合わせやらで関わってくのは確かだし、気を引き締めていかないと」