秘書室の悪魔とお見合いをしたら〜クールな秘書と偽装結婚することになり、いつの間にか愛でられていました〜

「……dadーー!?、なんでここに……⁉」
「なんでじゃなーーい! パーティ―の招待状が来ないと思ったら、何も知らない父さん味方につけて、勝手なことをしようなど! 許さないぞー!」

 顔を突き合わせて親子喧嘩をはじめるクリスとレノックス社長。
 桜さんとクリス伝いで欠席を聞いていたダニエル会長は目を真ん丸くし、事情を知った風な漆鷲会長に至っては、やれやれと静観している。
 
周囲が騒然とし始めるなか、無意識に深い吐息が口からこぼれた……。

 ――ようやく……終わりだな。

 
「ダニエルよ、はじめから決まっていたというのは……?」
「……命の恩人が『長年思い続けてきた相手がいる』と言っていたんだ。そんな彼女の報われた結果を目の当たりにしたら、スカウトなどするわけがないだろう……しかし、“ふたりとも”いい秘書だな、サカエよ――」

 背後でふたりの会長がそんな会話をしていたのは、きっと俺の耳にしか届かなかっただろう。

 彼女がダニエル会長に何を話したかはわからないが……そういうことか。

 仕事に戻る彼女を見送りながら、藤森に指摘されるまで、その顔が緩んでることに気づかなかった。
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