雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。
 いっぱい繋がって、疲労困憊になって、ベッドでぐてんと弛緩した。
 チュッチュッとこめかみにキスをしたり、身体を撫でたりしている進藤が「やべー、何度でもできる」なんてほざいているけど、もうムリ、限界。
 力なく睨みつけると、進藤が笑った。

「わかってる。飯作ってやるから、寝てな」

 ぽんぽんと頭を叩き、優しい顔でキスしてくるから、うっかりときめいてしまう。
 私を布団に残して着替えている進藤を、なんとなく目で追う。

(好きだなぁ)

 ふいに思う。
 繋がっていないのに、好きな気持ちは続いている。

(よかった! 私が好きなのは進藤のアレじゃなくて、本人だ!)

「あ、進藤……」
「ん?」

 鼻歌まじりにシャツのボタンを止めていたヤツが振り向いた。

「好き」

 進藤は目を見開いたかと思ったら、片手で顔を覆った。
 その手の隙間から見える顔は真っ赤になっていた。
 しばらくふるふる震えていた進藤は、キッとこっちを見た。

「お、ま、え、な〜! なんでこのタイミングで言うんだ! 飯はいらないという意味か?」

 彼はせっかく着たシャツを脱ぎ捨て、私に覆いかぶさってくる。

「え? えぇ?」

 むちゃくちゃにキスをされて、また中に進藤が入ってきた。

「まったくお前は、ムカつくほど可愛いな。夏希、俺も好きだ」

 それから私がご飯にありつけたのはずいぶん後だった。



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