別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
『心春より私のほうが先にリハビリになったでしょ? リハビリ室に行くとき、廊下に絵本を握りしめた男の子がいたの。お母さんと一緒だったんだけど、ここまでよと言われて泣きそうになってた。なんで中に入らないんだろうって不思議で、印象に残ったんだよね』


絵本って……。
間違いない、陸人さんだ。


「そっか……」


あの頃からの縁がこうして再びつながってよかったと心から思う。


『すごい純愛だよね。天沢さんのこと、大事にしなよ』
「うん、そうする」


陸人さんは私と凛を幸せにすると約束してくれた。

それなら私が陸人さんを幸せにする。そう胸に誓った。



食品会社を退職したものの、ずっとバタバタしている。

急ピッチで引っ越しの準備を進めているのだ。

保育園が遠くなるのが心配なのだが、せっかく祐くんという友達ができた凛を転園させるのも忍びなく、電車で通う覚悟をしている。

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