別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「フロアマットは車が汚れないように敷いてあるんだから、これは汚してもいいんですよ。洗えるから」
「そう、ですよね」


といっても、きれいにしてあるためおどおどしてしまう。


「それより……」


彼がいきなり助手席に乗り出してくるので、息が止まった。


「濡れてる。ごめんね、俺のせいで」


ハンカチで私の肩を拭いてくれたのだ。


「いっ、いえっ。天沢さんも」


きっと、私のほうに傘を傾けてくれたのだろう。
私よりずっと濡れていた。


「俺は平気。さっきタオル貸してもらったし。本当にありがとう」


彼はお礼を口にするが、私はそれ以上の親切をもらっている。


「さて、住所教えてもらえますか?」


エンジンをかけた彼は「少し寒いね」と言いながら暖房をつけ、そのあとナビに手を伸ばす。

私が住所を告げると、なぜか不思議そうな顔をした。


「どうかされました?」
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