冷え切った皮膚でも抱いといて
3
 新築アパートの3階。301号室。神崎の住居。一人暮らし。近くに借りてるアパートがあるから、と連れられ、招かれ、神崎が寝食をして過ごしているという一室に俺は足を踏み入れていた。風の当たる外で手を繋いで歩いていた時よりも、神崎の生活感や匂いが漂うこの場所にいる方が妙な緊張感に襲われる。密室に、二人きり。好きな人と、二人きり。意識せざるを得なかった。

 コンビニに寄って購入した酎ハイやちょっとしたつまみを机の上に置いた神崎は、少し着替えてくる、と言い残し、脱衣所へ向かった。そこで、あ、と飲みかけの酎ハイを飛散させ神崎の服を濡らしてしまっていたことを思い出し、慣れない床を踏みしめながら彼の背中を追いかけ慌てて謝罪を口にするが、気にしてない、と淡々と言葉を返されるだけだった。その声色はいつもと変わりがなく、特に低くもなかったから、気にしてないというのは本当なのだろう。それでも、例え相手による過失であったとしても、寒い中濡れたまま外を歩かせてしまったことは申し訳なく感じた。
< 14 / 52 >

この作品をシェア

pagetop