離婚しましたが、新しい恋が始まりました


「私もお前の離婚以来、あそこの家との関係は断っていたから知らなかったんだが……」
「だって、おかしいです。子供がいないなんて」

離婚を切り出された時の貴洋の顔を思い出した。『恋人が妊娠した』と確かに言った。

「妊娠は狂言だったと、噂になっていたようだ」
「えっ?」
「だからあの時は、貴洋君の子を妊娠したって嘘をついていたんだろう」
「そんな……」

「お前は辛いかもしれないが、他人に聞くよりは私からと思ってね」
「はい。お心遣いありがとうございます」

「夫婦仲はともかく、あそこの姑は厳しいからな。貴洋君の再婚相手は苦労していると思うよ」
「ええ、そうでしょうね。お義母様は完璧主義だから」

姑の八重子は、紬希が家事も仕事も完璧にこなさないと満足してくれない厳格な人だった。
それでも、貴洋の恋人が妊娠したと聞いた時はとても嬉しそうな顔をしていたのを思い出した。
息子に孫が生まれる事を楽しみにしていたはずだ。期待を裏切られて、なんだか可哀そうな気もした。

「お前も、そろそろ……考えたらどうなんだい?」
叔父は再婚の事を言っているのだろう。

「いいのよ、叔父さま。私、今が幸せなの」

「そうか」


叔父がため息をつく姿は、チョッピリ寂しそうに見えた。

< 36 / 113 >

この作品をシェア

pagetop