お館様の番選び
それから陽人ちゃんを眠っている繭さんにそっと返し、わたしたちはゲストハウスを後にした。

まだまだ外は暗い。見上げると綺麗な星空が広がっていた。

…陽様たちがこれからどうなるのか…はっきりしたことはまだ何も決まっていない。

それでもわたしたちが今日笑えたことは良かったと思う…。

「わっ!朧様っ?!…あかりっ、俺無理だわ。後は頼んだっ!!」

明叔父が鼻を押さえて突然駆け出した。

ん?

…振り返ると…そこには子供のようにポロポロと泣いて立ち尽くす朧がいた…。

…なんか、懐かしいなー…。わたしは朧に近づいてわたしの背はとっくに抜いた朧を抱きしめ、幼い頃の朧にしていたように頭を撫でた。

「朧…気が抜けちゃたんだね…。」

「……。」コクリっ

「…陽様たち…幸せになれるといいね。」

「……。」コクリっ

「…涙…止まんないね…。」

「……。」コクリっ

「…よしよし…。」

ポロポロポロポロと涙を流して泣き続ける朧…いつのまにか朧の両手はわたしの身体をぎゅーと包みあたりにはゆっくりと朧の力が満ちて行く。

……ああ…甘…い…いい匂い……あれ?

…ぐるぐる……ぐるぐる……ぐる…ぐる………こ……これは……?

……ぐでぇ……。

「…あ…あかり?」

「……朧…あん…た…もう…泣く…の……禁止…。」

ぐるぐるぐるぐる世界が回る……。

わたしはそのままぶっ倒れた……。
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