お館様の番選び
朧様
(あかり視点)

初めて入った朧の部屋には本当に何もなかった。あるのは机とベッドぐらいだ。

最近部屋を移ったと言ってたけどそれにしても小学生らしくない部屋だ。

朧の好きなものぐらい知っておきたいと嫌がる朧を押し退けて部屋に無理矢理入ってみたが、これではなんの収穫にもならないじゃない。

「…気持ちいいくらいスッキリした部屋だね。」

「……前の部屋にあった物はほとんど捨てたから……ね。」

「ふーん。」

「……もういい?早く…出」

「あっ、朧の番選びが私の主な仕事に決まったみたいだからよろしくね。」

「えっ?」

朧の綺麗な顔が一瞬で歪む。

(…相変わらず、番選び、嫌なんだね。)

「まっ、わたしが担当になったからには覚悟してね。色々策は練ってるんだからっ!じゃ、片付けがあるから部屋に戻るね。おじゃましましたっ!」

「待って。あかり。…。」

朧がわたしの手を掴んで何か言いたそうにしているがなかなか次の言葉が出てこない。

「なに?」

「えっと……何か……感じ…ない?」

「えっ?……もしかして、ゆっゆっゆっ…幽霊的な……やつ?」

あせって辺りを見回す。

「…もう…いい。」

朧はがくっと頭を垂れわたしの手を離した。

(もう。変な朧!)
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