お館様の番選び
「お姉ちゃん。蛍、大丈夫かな…。」
「悪酔いしないように、お母さんにお薬もらっといで。飲んで寝たら明日にはもとに戻ってるはずだから。」
「うん。わかった。」

ぐで狸の蛍を大事に抱えた光の姿が見えなくなるのを見届けてから、朧の側に寄る。

「朧様。」
「んっ。」

先ほどまでの砕けた雰囲気は消え、朧の全身から上に立つ者の空気を感じた。
そんな時は、わたしも「弟」ではなく「次期当主」、「次代のお館様」として接する。

「羽生航さんと風音さんとのお子さんですが…お二人は人型、もうお二人は獣型でした」
「獣人は何人いそう?」
「…まだ生まれたばかりなのでなんとも…。ただ人型の子の一人には肩甲骨の辺りにうっすらと羽毛のようなものが見られました…。」
「そう…一人は確実に獣人だろうな…。」
「はい。」
「他の子たちも様子をみて、適切な対応をしないとだな。」
「そうですね…つぎに野茂翔さんと…」
わたしは手元の資料を見ながらこの町の出産・出生に関する報告を続けた。
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