年下男子に愛されて。

危険な合宿1日目


午前10時30分


「成瀬君…成瀬く〜ん!ついたよっ」


何このでかい巨体。
揺らしても揺らしても起きない上に
もたれかかってきてるから肩が限界。




「椿先輩、この子早くどかしてください。」




拓『おいこら起きろガキ』




ベシッ




この人いつか暴力で訴えられないか不安だ…




京『…あっ?ついた?』




起きた…


私休みの日に何してるんだか…




拓『早く荷物持ってけ〜1時間後に体育館な〜』




合宿ってこんな感じなのか。
私はサポートとご飯係か…何からしよう。




京『えーまさん』




「早く荷物持っていきなさい。」




後ろから私の頭をアゴ置きにしてきている
成瀬君をどかし自分の荷物を取り出す。



京『俺が持つからいいよ。あんたちっこいから
歩くの遅そうだし。』




「あのね!世間的には君が!大きいのよ?!」




『えまさんは世間的に見ても小さいよ〜!』





他から野次が入りムキになっている
自分が恥ずかしくなってきた。



て言うかここ



「さむっ」



拓『甘露寺、そんな薄着できたのか?
ここ寒いぞ?』




「先輩が行き先教えてくれなかったじゃないですか…2泊3日の用意してこいしか言われてません」




つくづく適当な先輩だ。
それにしても困った、夏だし暑いと思い上着なんて持ってきていないのだ。




家まで車で2時間、とても取りに行けない…



拓『ほら、これ貸してやるから着とけ』




「先輩〜〜ありがとうございます!」





あったかい〜!サイズが大きいのは
大目に見といてあげますよ!



私は気づかなかった。その光景を睨みつけてる
男の子がいる事に…



拓『まぁ甘露寺は急に連れてこられて何したら
いいか分からんだろうからこいつに聞け!』



『鈴木 夏歌 スズキ ナツカって言います!』



「鈴木さんよろしくお願いします。」



黒のショートカットでいかにも運動部!
って感じの元気そうな女の子だ。




夏『じゃあ、はい!甘露寺さんはご飯作りお願いします!』




「はい。また終わったら声掛けます。」




京『え?えまさん俺のバスケ見てくれないの?』




「ご飯作ったら体育館行くから早く行ってきなよ…」




京『その服…』




夏『ほら!京早く一緒に行くよ!甘露寺さん困ってるでしょ!』



鈴木さんが無理やり引き離し解放されたので調理場に向かおうとすると



夏『ごめんなさいねっ!誰にでもあんな感じで私もいつも困ってるの!今日はめずらしく他の女の人がいて甘露寺さんの方に行っちゃうみたい!』




「大変ですね、では私はこれで。」




夏『私も京連れてかなくちゃ行けないのでまた後で!』



歩くこと10分




ようやく調理場につき食材を確認する。
食べ盛りの男子高校生が…18人?!

嘘でしょどんだけ作らなきゃいけないのよ…



考えてる暇はないので手際よく
カレーを作り始める。




コトコトコト




もうそろそろ完成かな。それにしても量が多すぎて腱鞘炎(けんしょうえん)になりそうだわ…


マネージャーって大変な仕事なんだな
ボーッとそんな事を考えていると鈴木さんがやって来た。



夏『甘露寺さんご飯作るのに何時間かけてるんですか?!にんじんはみじん切りにして欲しかったな…まぁいいや早く来てください!』




すごい言うじゃん…笑
まぁいいや…



夏『みんなが昼休憩してる間に飲み物の用意と
体育館の床モップがけしてください。』




「は…はい…。」



私の休憩はないのかな…
来たからには役に立たなきゃと
飲み物の用意をして急ぎ足で体育館へと向かった。



正午



「体育館ひっろ…」



これ1人でやるのか…
鈴木さんこんなのいつも一人でやるなんて
超人でしょ…



「やるぞー!!」




モップに水をつけ床を磨き始める。



キュッ


キュッ


キュッ




やっと半分か…
後20分しかない急がなきゃ…



京『あれ?えまさん何してんの?』



「成瀬君。なにってモップがけよ。
みんなが食べてる間に終わらせないと。」



京『そんなの練習始める前にみんなでやるよ。』




え…




だよね、1人だと大きいもんね…
なんとなくは思ってたよ。




京『そんな事よりなんで椿の服着てんの?』




「上着持ってきてなかったのよ。寒いから貸してもらったの。」







京『むっかつく』








フンと言ってどこかへ行ってしまった…



むっかつく?



それはこっちのセリフよ何あの子?



て言うか何これ1人でやらなくて良かったの?!
なんなのよムカつく!もうやってやるわよ!




「はぁ…終わった〜…」




やっと全面モップがけを終えた頃
バスケ部員達が戻ってきた。



『え?!えまさんやってくれたんスか?!』



『大変だったでしょ?言ってくれたら良かったのに』



「ははは…いい運動になったよ…」



ガラッ
颯爽と鈴木さんが現れ



夏『そうよ感謝してよね!大変だったんだから!でもみんなの練習少しでも長くやってもらいたくて…ね!えまさん!』




「はっははは…」




なんて図太い子なんだ…そうか分かった。
この子私の事嫌いなのか!




『ほら、京もえまさんと夏歌先輩にお礼言えよ』





京『は?なんで?』




『俺らの代わりにモップがけやってくれたんだってよ!』




京『えまさんありがとう。俺午後すっげー頑張るから見ててよ。』




「どういたしまして。頑張れ学生!」




夏歌先輩にも言えよとか周りに言われてるけど
絶対にお礼を言わない。


その姿になんだかスカッとしてしまい
逆に元気をもらって午後も頑張ろうと思った。





夏『じゃあ次外で洗濯物と食器洗い
よろしくお願いします!』




何がなんでも私を体育館に近づけたくないのだろう。
ちょっとバスケを見たかったなと思いながら
言われた仕事を片付けに行く。



カチャカチャカチャ




拓『パシられてるな〜』




「何なんですかあの子。まぁ別にいいですけど…」




拓『京に片思いしてる子。
敵対視されてるのかもな笑』



はははっと笑っているが笑い事じゃない。



拓『なんか、俺の服着てると思うと
お前小さくて可愛いな。』




「はいはい、そんな言葉で許しませんよ。」



拓『手伝うからそう怒るなよお姫様〜』



椿先輩に洗濯物と洗い物を手伝ってもらい
予想より早く片付いた。



「椿先輩は体育館に居なくていいんですか?」



拓『さすがに休みの日に連れ出して
こんなあからさまにパシられてたら良心が痛む』



まぁ確かに笑
椿先輩と他愛もない話をして体育館へと向かった。




その後も何かと頼まれ
すぐに体育館を追い出されて気がつけば
時刻は17時。練習が終わる時間だ。




最後くらいバスケを見たくて飲み物から汗ふきタオルまで全部用意して体育館に向かったが
着くと同時に部活が終わってしまった。



残念だけどしょうがないか。



気持ちを切り替え
タオルをみんなに渡そうとすると



夏『ありがとうございます!
また明日もお願いしますね!』



とタオルを奪われてしまった。
明日もこんな感じなのかと思うと気が重くなってきな〜…
こんな事なら仕事に行きたかった…





夏『ちょっと…京!!!』




急に大声が聞こえてきたので
視線を向けると目の前に成瀬君が立っていた。




京『えまさん俺のタオルは?』




「タオル??鈴木さんが配ってるでしょ?」




京『俺、えまさんからのタオルしか使わない』




『お前イケメンだからって調子乗りやがって〜』


『年上まで落としにかかるなモテ男』


『成瀬ガチ狙いか!確かにエグい美人だけど!』




同級生に茶化されてるのに見向きもしないで
真面目な顔でこちらを見ている。



「…誰が渡しても機能性は変わらないよ。」



京『やだ。じゃあ一緒にタオル取りに行く。』



そう言うと私の手を掴み脱衣所まで向かった。



「あのね〜…成瀬君さ、」




京『バスケしてるところ見て欲しかった』



ギュッ



急に振り返って抱きしめられた。



その姿はまるで拗ねてる子供のようだ。



ドキッ



ってなに高校生にときめいてるの私!!




「ちょっと離してよ!誰かに見られたらどうするつもりよ!」



離れようともがくとよけい力強く抱きしめてきた



京『約束…したのに。』




「…ごめんね。明日こそ見れるように頑張るからだから離して?。」




小さい子をあやす様に頭をなでると
満更でもない顔になりやっと離してくれた。




京『あ…』




「どうしたの?」




バサッ




上着?



京『椿の服なんて着るなよ。その格好見てるとイライラしてくる。』





拗ねた顔をして甘えてくるように
そう言ったのだ。




こんなの…




まるで




嫉妬してるみたいじゃん。






京『俺、あんたのこと好きになったみたい。』











チュッ





京『上着の貸し出し代いただました』




じゃーな〜と脱衣所から出てってしまった。
1人取り残された私はペタンと床に座り込んだ。






「えろガキ…」



真っ赤になった顔どうしてくれるのよ…。
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