毒舌な君の,ひどく甘い素顔
『ねぇ,今日もお願いできる? 私ちょっと用事があって……』



あの日も,何度聞いたか分からない台詞と,一応作られた申し訳なさそうな顔を前に,私は眉を下げた。



『ん。仕方ないよね』



仲が良いわけでもなく,この子と話すのはこんな時ぐらい。

嘘だと分かっていても,本当かもしれないと思うと,用事のない私は受け入れてしまう。

きっと,たまにしか話さなくても,友好的な彼女に嫌われるのを恐れてしまう私のせい。

うわべだけ。

そんなの私も一緒。

どうしていいか分からないから,出す言葉が本音でも,表情なんかが嘘臭い。

私が頼まれたのは放課後の日直の仕事。

窓締め,日誌,黒板を綺麗にすることect

男子には頼まれたことないけど,ほとんどの女子に頼まれるから,ほぼ毎日私がやっていた。



『わぁっいつもありがとね』



スマホをパッと手にとって,彼女は駆け出そうと振り向く。

きっと今日遊ぶ子に連絡を取るのだろうとおもい,同時にそれくらい隠してとも思った。

そんな日々に飽きてきたと自嘲気味に笑った時だった。

君の声が飛び込んできたのは。
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