毒舌な君の,ひどく甘い素顔
君がずるすぎるその瞬間
「ねぇ笹原さん。椛くんのなんなの?」



そんな予感は……していた。

むしろ,いままで平和でいたことの方が私には不思議だった。

今田くんがトイレに席をたったとき,アイコンタクトを取った4人の女子が私に怖い顔で尋ねる。

えっと……なんだろ。

それをそのまま言うわけにもいかない。



「………え…とも,だち?」

「はぁ!? 椛くんと笹原さんが友達? ふざけてんの?」



気の強そうな女の子が私に叫ぶ。

でも,今田くんが私をどう思っているかを考えると,それ以外になかった。



「笹原さんさ,なにを勘違いしてるのか知らないけど,自分のこと鏡で見たことある? 自分の中身,客観的に見たことある? 全然釣り合ってないから」



吐き捨てるようなその台詞に,心が痛む。

分かっ,てるよ。

そんなこと,わざわざ言われなくても。

いままでで一番の悪意にさらされているのが分かって,喉が渇れる。



「ごめん…」


なにに対する謝罪か,自分でも分からない。

だけど,なにか言わないと,気持ちと涙が溢れてしまいそうだった。

どうして今田くんは私のところに来てくれるの?

どうして,どうして

きりがないどうしてが,また溢れ出す。
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