溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
(11)攻防戦的なアレコレ
「な、んでっ、そんなこと言うんですかっ」

 寝室の扉を背に、パジャマ姿の日和美(ひなみ)はスウェット上下の信武(しのぶ)と押し問答の真っ最中。

 ――と言うのも。


「日和美、今夜なんだけどな」

「ご自宅に戻られるんですよね?」

「はぁ!? んなわけねぇだろ!」

 記憶も戻ったようだし、夕飯を食べ終えたらてっきり自宅へ戻ってくれると思っていた信武なのに、至極当然のようにそのままここへ(とど)まると言い出して。

 この(ひと)は、一体全体何を言い出すんでしょうね?と思った日和美だ。

 そう言えば夕方にも『【一緒に住む】ことに関しちゃ、日和美も異存はねぇみてぇじゃん?』とか意味不明なことを言っていたのをふと思い出して。

 日和美は(え? あれって冗談じゃなかったの?)と背筋を凍らせた。

 大体おかしいと思ったのだ。

 夕飯後、信武は当然のように風呂へ入ると言い出したのだから。
 今から自分のマンションに戻って風呂の湯を溜めたりするのが面倒なのかな?と思い直した日和美は、そのまま外を出歩いても大丈夫そうなスウェットの上下とタオルを用意して。
 「なぁ、せっかくだし一緒に入んね?」などと寝言を()かす信武を「生憎(あいにく)と、せっかくの要素を見つけられません」と溜め息まじりにあしらって風呂場へと押し込んだのだけれど。
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