溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
(13)立神信武という男
 職場に行くまでの道すがら、「歩きスマホは良くない」と分かっていながらも、どうしてもスマートフォンを操作せずにはいられなかった日和美(ひなみ)だ。

(だってだって、信武(しのぶ)さんの正体が気になるんだもん)

 昨夜は意味深なことを言われてもすぐに添い寝を強要されてしまい、調べる時間が取れなかった。


 はやる気持ちを抑えながら大手検索エンジンGougle(ゴーグル)に『立神(たつがみ)信武(しのぶ)』と打ち込んでサーチボタンをタップしたら……。

 ネット上の百科事典的サイト『Webpedia(ウェブペディア)』が一番上に乗っかってきた。

 そこをタップしたら「立神信武(たつがみしのぶ、199*年2月10日-)は、日本の小説家 、直川賞(なおかわしょう)受賞作家。血液型AB型 。俳優の神立(かんだち)マコト(本名・立神真武(まなぶ))は実弟。 アメリカ生まれ……云々……」 と書かれていて。

 日和美は信武が自分より九つ年上なのだと初めて知った。


 著書には直川賞を受賞した『金魚鉢割れた』のほかに、『陽だまりの硝子玉(びぃどろ)』『(なげ)く人』『犬を飼う』『白いうなじの少女』『いい声で()く女』『ある茶葉店店主の淫らな劣情』『誘いかける蜜口(みつくち)』などがあるらしい。

 タイトルからしていかにも官能小説と言ったエッチそうなのもあれば、もしや純文学ですか?と思うような堅そうなイメージのものまでさまざまで。

 日和美はウェブペの情報に視線を走らせながら、一体どんな作風の作家さんなのですか!?と悩まずにはいられない。

 ウェブぺディアによると、立神信武は作品によってまるで別人が書いたみたいに筆致が変わる作家として有名らしい。

 余りに文体が豹変するため、実はゴーストライターが複数名いて、その人たちによって生み出された作品もあるのではないか?とまことしやかに噂されているとも書かれていた。
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