溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜
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 シーツなどを綺麗なものに取り換えて、外したものを脱衣所に設置した洗濯機の中へ放り込んでスイッチを押したついで。

 日和美(ひなみ)の外泊グッズが入った鞄を勝手にあさるのは良くないと思った信武(しのぶ)は、「とりあえず俺の服、置いとくわ」と、浴室内の日和美に声を掛けてから、自分のTシャツをふわふわの今治(いまばり)タオルとともに脱衣所へ置いた。

 日和美に貸すTシャツ。実は白と黒とで迷ったのだけれど、白だと《《色々》》透けて見えそうでまずいと思って。

 あえて生地が厚めの黒ティーを選んだ信武だ。

 信武が擦りガラスの扉越し、そう声を掛けたと同時、中からパチャンッとお湯が跳ねる音がして、日和美が「ひゃいっ! ありがと、ござますっ」とどこか慌てた様子で返してくる。

(大分覚醒してきたな)

 ほわほわに泡立てたボディーソープで彼女の全身を包み込んで清めた時には、まだぼんやりと信武の成すがままになっていた日和美だ。

 あの後はお湯で日和美の泡を洗い流してから、ふらつかないようヒノキの風呂椅子に座らせたのだけれど。

 すぐそば。
 信武が自分の身体をガシガシと適当に洗うさまを、日和美がボォーッと《《照れる様子もなく》》見上げていたのを覚えている。

 それは逆に信武が照れてしまいそうなほどの熱視線で――。

 情事の前後、女性の前で裸になることを恥ずかしいと思ったことなんて一度たりともなかった信武なのに、今回ばかりは(マジ、勘弁してくれ)と思ってしまった。

 見境なく再度日和美を襲ってしまうことを回避したくて、彼女の身体を見ないように意識していたのも照れに拍車を掛けたのかも知れない。

 余りに早く湯船へ追いやってしまったら、日和美が湯あたりしてしまいそうで怖かったのが一旦彼女を椅子に腰掛けさせた理由だったのだが――。

 正直信武は男性経験のほとんどない日和美から、至近距離であんなにまじまじと身体を見詰められるだなんて思っていなかった。

 恥ずかしがって目をそらす姿は想像出来ても、あれは全くの想定外。

(意識の飛んだ日和美、色んな意味で最強過ぎんだろっ)

 次に彼女を抱くときは、もう少し手加減しようと心に誓った信武だ。
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