三番線に恋がくる
今日もカッコいいなあ……

本を読む姿がとても様になっている。
なに読んでいるのかな?
よく知らんけど、ダザイオサムとかカワバタヤスナリとか?なんかそういうのが似合う。ドストエフスキーとか。いや、本当よく知らんけど。
間違っても弟が愛読している「おならの大冒険」ではないだろう。

……待てよ。あの人がおならの大冒険……。それはそれで……。

「………あり。全然あり」

そんな馬鹿なことを考えていると、次の駅についた。
無機質なアナウンスが流れ、私が立っている近くの扉が開く。

脇によけて乗り降りの邪魔にならないようにする。
サラリーマン、学生、お年寄り。
数人の乗客があらたに乗り込んできた。

私の乗る電車は朝のダイヤにしては乗客が少ないと思う。
通勤ラッシュなんかには程遠いし。
人と人が間をあけて立っていられるくらいの余裕はある。

でも座る席は私が乗る頃には大抵全部埋まっている。
だからほぼ毎日座っている彼は、おそらく始発駅に近い駅から乗ってきているのだろう。

どこだろう。知りたいな。
ああ、何でも知りたい。彼のこと。
話してみたい。いろいろ聞いてみたい。

せめて、せめて。
私のこと気づいてほしいな。

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