それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「よろしくお願いします」

とりあえず早く終わらせたくて、私はその場でぺこりと頭を下げる。

「うん、よろしく!」

私が嫌がっていることに気づいていないのか、それとも気づいていて敢えてなのかはわからないけれど、握手を促すように、先生は右手を私の目線まであげた。

やっぱり……握手しろ、ってことだよね。
なに、この人……めんどくさい。

どうにかこの状況を打破したいと思って、先生から視線を逸らすと、クラス中から視線を集めてしまっていることに気づく。

ああ、もう、嫌だな。
どうして先生と、握手しないといけないんだろう。

けれど、それ以上にー…目の前から早く去ってほしい。

私は上を向いて大きくため息をしてから、舌打ちしたい気持ちをこらえて右手を差し出す。

先生は、やっと応えた私に「よろしくな」と言いながら右手を握りしめると、満足そうに笑った。

「あ、そうだ」

やっと去ってくれると思ったのに、一度背を向けた先生は、再度私の方を見た。

「悪いんだけど、今日の昼休み、職員室に来てくれる?」

……はい?

「どうして、ですか?」

“嫌です”と即答したい気持ちを抑えて、私は努めて冷静に、問い返す。

「保護者向けの資料配ってほしいんだよ」

午前中に完成させておくから取りに来てよ、と言う先生に、「嫌です」と私は被せる。

「そういう仕事は、日直がやることになっています。今日は、出席番号1番と2番の子が日直なので、その二人に頼んでください」

言い終えると同時に、私は素早く先生から目を逸らす。
どうかこれ以上、面倒事に巻き込まれませんように、と祈りながら。

「えー、でも俺、まだ1番と2番の奴と話したことないんだけど」

私の祈りは全く届かなかったのか、先生は私の肩をツンツンとつついた。

「何ですか?」

「だから俺、まだ今日の日直と話したことないんだって」

「それがどうしました?」

「だから、今日ぐらい、お前が引き受けてよ、俺のお願い事」

「あの」

勢いよく先生を見上げると、ニコニコと笑った先生と目が合う。

なんか、ムカつく。

こっちは、あんたのせいでイライラしているのに、こんなにもヘラヘラしやがって。

「……これを機に、話せばいいんじゃないですか」

しっかり声には怒りを滲ませたのに、目の前にいる人は顔色一つも変えない。

「いいじゃん。お願い!」

「だから、私は日直じゃ」

「じゃ、そういうことだから! ちゃんと来いよ!」

先生は私の言葉を遮って告げると、クルッと背を向け、スタスタと教室から出て行く。

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