それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「これで本当に、講習、終わりなんだよね。もう私たちが受けることはないんだよね」

「そうかあ、そうだねえ……」

確かに。何も考えず受けていたけれど、このしんどさを味わうのも最後なんだ……。

「そう思うと……」

美羽が私を見てから、笑う。

「そう思っても、寂しくないわ」

「当たり前じゃん」

「当たり前かあ」

2人で顔を見合わせて笑う。

「こんなしんどい講習を受けられなくて寂しく思うなんて、変人しかいないよ」

「それか、ドMだね」

私の言葉に、美羽は「確かに」と言いながら、ケラケラ笑った。

「それよりさ! 美羽!」

私は倒していた上半身を、ガバッと勢いよく起こす。

「合宿が終わったということは!?」

私の問いかけに、少し大きい声で「ご褒美タイムだ~~~」と叫ぶ。

「その通り!」

美羽は「やったあ!!」と満面の笑みを浮かべた。


「始まるまで後30分ぐらいあるねえ」

荷物をまとめ終えた美羽が、「どうしようか?」と私に問いかける。

「まだ30分もあるんだ。それなら食堂で、アイスでも食べる?」

お腹減ったんだよね、と付け加えると、美羽は「お、いいねえ」と首を縦に振った。

「今日は何のアイス食べようかな~」

教室にカバンを置いて、お財布とスマートフォンだけ持って食堂へ向かう。

「今日はとびっきり甘い味のアイスが食べたいなあ」

食堂へ続く廊下を、美羽と並びながらのんびり歩く。

「あー、わかる。疲れているときはやっぱり甘いものに限るよね」

「そうそう。めちゃくちゃ甘いチョコレート味とか食べたい」

「夏っぽいフレーバーも捨て難くない? マンゴーとか」

「確かに……!」

マンゴーか。マンゴーもいいな。甘いのに、後味はサッパリ気味だし。

けど、やっぱりチョコレートも捨て難い。疲れている時のチョコレートのおいしさは格別だからなあ……。

「ねえねえ、それよりさ」

何味にしようか悩んでいる私の顔を、美羽が覗き込む。

「今日、晴れてよかったね」

「本当だよ~~~!」

美羽の言葉に、私はブンブンと強く首を縦に振る。
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