それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「1年生は先週で夏期講習終わっているよね……? わざわざ花火大会のために来たのかなあ?」

「そうだね……」

まあ、確かに、花火大会に行くより綺麗に見えるから、気持ちや考えはわかるけれど。

「まあ、私たちだって1年生の時、わざわざ花火見るために、夕方から自習しに来たしねえ」

「そうだったねえ……!」

懐かしい話に、思わず顔が綻ぶ。

「メインは花火を見ることだったのに、親には真面目な顔で『勉強したいから』とか言って、学校に来たんだった」

「私も、私も!」

美羽が笑う。

「ちなみに私の場合は、『本当に勉強するの?』って聞かれたけどね」

失礼だよねえ、と拗ねる美羽に、思わず私は吹き出す。


お目当てのアイスクリームを買いー結局チョコレート味にしたー、談笑しながら空いている座席を探している時、よく通る声が私の名前を呼んだ。

「席、無いんだろ? ここに使っていない椅子あるから、座れよ」

翼が、自分たちが使っている机にある椅子と、近くに置かれていた使われていない椅子を、私と美羽のために運んできてくれた。

「使ってもいいの?」

翼と、翼と一緒にご飯を食べていた男子たち3人に問いかけると、翼以外の3人が声を揃えて「いいよ」と答えた。

「ありがとう」

お礼を述べながら、私は翼の隣に、美羽は私の目の前に座る。

助かった……。このままだと、立ちながらアイスを食べるところだった。

それにしても、翼たちはやっぱり男の子だなあ。

机の上には、唐揚げやポテト、おにぎりといった、がっつり系の食事が置かれている。

きっと、アイスとかじゃ、腹の足しにならないんだろうな。


「翼たちも花火をみるために残っているんでしょ?」

少し溶けかけたアイスクリームをスプーンですくい、こぼれないようにゆっくりと口へ運ぶ。

美味しい……。

アイスが胃に入ると同時に、甘さが疲れていた脳にどんどんと染み渡り、あっという間に疲れが回復したような気がした。

「おう! 沙帆たちもだろ?」

「もちろん!!」

声を揃えて食い気味に答えた私たちに、翼の隣にいた男の子が、「双子かよ」と笑った。

「せっかくだから、一緒に見るか!」

翼の提案に、チラッと目の前にいる美羽を見る。

すると美羽は私の代わりに、翼に「うん、そうしよう」と答えてくれた。

そういえば去年も、こうやって、当日一緒に見ることになったっけ。
懐かしいなあ。もうあれから1年なのか。あっという間だったな……。

「今年も綺麗に見えるといいなあ」

独り言のように呟いた私に、翼は「そうだな」と笑ってくれた。
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