それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「先生、ジャージ着ていると体育の先生みたいだね」

小走りで先生の元へ駆け寄る。

「そうか? なんか久しぶりに着たから、しっくりこないんだよな」

いつの間にかスーツの方が慣れてしまった、と言う先生に、「へえ、そういうもんなんだ」と頷く。


「そういえば、先生」

コーンが大量に積まれている場所を目指して、先生の隣を歩く。

「さっき美羽と話していて思ったんだけど、私、結局いつまで雑用係やるんだっけ? 最初、桜が咲いている間、っていう約束だったような……」

「そうだったっけ?」

先生はキョトンと首を傾げた。

「えー、そうだったよ! 面談室で約束したじゃん!!」

覚えてない?と、次は私が首を傾げた。

「ほら、面談室から桜が綺麗に見えるからさ。『雑用係を引き受けてくれたら、いつでも面談室に連れてきてやるぞ~』って先生が言ったじゃん!」

「そんなこと……言った気もするなあ……」

「……本当に覚えていないの?」

いや、きっと覚えているだろうな。
先生、人と話したこと、意外ときちんと覚えているもんな。

「……覚えているよね?」

「まあいいじゃん! やっぱりお前が一番気軽に頼めるんだもん!」

「どっちみち、あと半年の我慢!」と先生は笑いながら付け加える。

「半年って、長すぎ……」

「まあ、そう言わずにさ。人助けだと思ってやろうぜ」

「なんかそれ、春にも聞いた気がする……」

言い争っているうちに、コーン置き場に着く。
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