それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。
「お前がいつからO大を目指しているのかはしらないけどさ、少なくともこの半年間、ずっとO大を第一志望校として掲げてきたじゃん。ここ2か月、良い判定が出ないだけで志望校を変えるなんて、今までの努力が報われる可能性を放棄するのと、一緒なんじゃないか」

先生の言葉が、真っ直ぐに、グサッと音を立てて、胸に突き刺さる。

「それに、O大を受験するかしないかは、別に今決めなくていいじゃん。そもそも、今D判定やE判定でも、合格するやつなんてたくさんいる。最終的には、センター試験の出来で決めればいいんじゃないか?」

「けど……学校によって問題形式、全然違うじゃん。早く決めて対策しないと」

「まあそれはそうだけど」

先生は一応私の考えを肯定しつつ、続けた。

「第二志望、どこだっけ?」

「S大」

「S大か。じゃあ、聞くけど」

先生は、何かを試すような目つきで、私に尋ねた。


「俺がここで、『O大を諦めてS大を受験しろ』っていったら、吉川は納得できる?」


「それは……」

俯いた私に、先生は「そうだよな」と言った。

「やっぱりO大に行きたいんだろ。それなら、諦めずに頑張れ」

それに、と、先生は笑った。

「少なくとも、俺が知っている吉川は、自分の夢を簡単に諦めるような、ヤワな奴じゃねえよ」

「先生……」

そっか、私、やっぱりO大に行きたかったのか……。

一応第二志望でS大を掲げてはいるけれど……S大のことを調べていない時点で、O大しか興味が無かったんだな。

私は元からー…諦めるつもり、なかったのか。

私の気持ちを知っていて、先生は試すようなことを聞いたのかな。
私の気持ちを知っていて、先生は励ましてくれたのかな。

どっちでもいいや。どっちでもいいけど。

「もうちょっと、頑張ってみようかな」

「おう、そうしろ」

先生は、「まだ受験まで4か月もあるんだから」と笑った。

「あとなあ」

先生は呆れたような視線で私を見る。

「一人で悩むのはやめろよな。どうせ俺にはバレるんだから」

「……確かに」

「横尾とか児玉に相談しづらいんだったら、俺に相談しろ。お前にまで一人で思いつめられちゃうと、俺の存在意義、薄れちゃうじゃん」

頭上から降ってきた言葉に、私はハッと顔をあげる。

するとそこには、少ししょぼんと落ち込んだような、拗ねたような表情をした先生がいたものだから、思わず私は吹き出してしまった。
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