それでも私は、あなたがいる未来を、描きたかった。

各クラスが出している屋台を一回りし、事前に「食べたいね」といっていたものを飲み食いすると、「久しぶりにゆっくり話そう」という彼の提案で、私たちはジュースを片手に屋上へ向かった。

「なんだか、こうやって２人で話すの、久しぶりだよな」

「最近はもっぱら勉強に勤しんでいたからね……」

鉄の扉をゆっくり開けると、涼しい風が吹き抜ける。

「もうすぐ、冬だね」

「そうだな。少し前までは暑かったのになあ……」

翼はそういうと、フェンスにもたれながらグラウンドを見下ろした。

「遂に終わっちゃうね、高校生最後のイベント」

私も翼の隣に立つと、まだまだ盛り上がりをみせるグラウンドを眼下に見る。

「そうだな」

翼は少しだけ微笑むと、「高校生活、あっという間だったよな」とつぶやいた。

「そうだね、後、もう半年で、大学生なんだもんね」

合格したらだけど、と言いそうになり、私は口を閉じる。

受験が近い今、少しでも縁起の悪いことは言いたくなかった。
――この、うっかり不吉なことを言いそうになるクセ、辞めなきゃな……。

「俺らが出会ったときは、まだ中学卒業したばっかりだったのにな」

「ほんとだねえ……懐かしいね」

翼と出逢った頃は、大学生なんて大人と同じだと思うぐらい、まだまだ先のことのように思えたのに。

後半年の高校生活も、そしてきっと大学生活もあっという間に終わって……気が付けば、社会人になるんだろうな。

自分が社会に出て働いているなんて、全く想像つかないけれど。
――その時、私は、夢を叶えられているのだろうか。

「俺さ」

自分の将来をぼんやり考えていた私は、彼が話し出したと同時に、彼に意識を向ける。

大きく息を吸い込むと、少し眉間にしわをよせながら、翼はゆっくりと、「T大を受験することに決めた」と吐き出した。

「そっか……Ｔ大か。決めたんだね」

向上心があって、努力家の翼だ。

きっとK大ではなくT大にするだろうと思っていたから、彼の告白に驚きはなかった。

「うん、決めた」

一方で、翼は何故か暗い表情をする。

なんだか、翼らしくない。