甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
再び性急に口づけられる。

長く甘いキスに思考が奪われていく。

下唇を甘噛みされ、唇の端にキスを落としつつ、彼は私の衣類のボタンを器用に外していく。

首筋をたどる指と舌に、体が嫌というほど反応する。

鎖骨に強く吸い付かれ、チクリとした痛みが広がる。

大きな手が、包み込むように触れた胸にもいくつかの花を散らしていく。

肌に直接口づけられる感触と、熱い熱に浮かされる。

壊れ物に触れるかのような繊細な手つきが、余すことなく私の体に触れ、知られたばかりの弱い部分を攻め立て暴いていく。

大好きな人とひとつに繋がる嬉しさに胸がいっぱいになると同時に、想いが届かない切なさに心が悲鳴を上げる。

目尻からひと粒こぼれ落ちた涙は心からのものか、生理的なものかわからない。

割り切っていたはずなのに、割り切れたはずなのに、心が乱れて仕方ない。

『好き』と伝える代わりに、何度も彼の名前を呼び、汗ばんだ広い背中にしがみつく。

朝になれば、きちんとこの気持ちを隠すから。

せめて今だけは許してほしい。

出会った頃はこの人を好きになるなんて、ましてや結婚するなんて思いもしなかった。

力の入らない腕を持ち上げ、彼の頭を引き寄せた。

私の体を穿つ彼は軽く目を見開くが、私の好きにさせてくれた。

このまま一日でも長く彼の妻でいられますように。

心からの願いを込めて、彼の唇に初めて自分からキスをした。

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