本気の恋を、教えてやるよ。



つられて俺も苦い顔になってしまう。


「……そうだな」


俺だって。

俺だってあんな最低野郎、稲葉の彼氏だなんて認めてない。


俺の方が、何倍も、何十倍も稲葉のこと大事にしてやれるのに……。


「そこでお願いなんだけどさ、もー駒澤、茉莉のこと奪っちゃってよ」

「……は!?」


感傷に浸りかけてた気持ちが、トンデモ発言により引き戻される。


いきなり何を言い出すんだコイツ……。


真意がわからず、まじまじと観察してしまった俺に、妻夫木は頬杖をついてにっこり微笑んだ。


「無理矢理キスでもなんでもしちゃってさ!駒澤なら許す!」

「キ……!?」


キスって!

そりゃ、稲葉と出来たら最高だとは思うけど……いやいや無理矢理はダメだろ。


脳裏に浮かび上がった稲葉の顔を、ぶんぶんとかき消す。


しかし妻夫木はそんな俺の葛藤には気づかず言葉を続ける。




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