本気の恋を、教えてやるよ。

#1.勘違いしそうになる





「そういえばもうすぐ創立記念イベントね」


まだまだ夏の暑さが残る九月中旬。


気だるげに吐き出された梓ちゃんの言葉に、確かにそうだな、と思い至る。


この会社では毎年、会社の創立記念日に大掛かりなイベントを行う。


ホテルを貸し切って、前半は大手の取引先のお偉いさん方を呼んだ懇親会。様々な講演会などもあり、立食形式のセミナーのようなイメージだ。

そして後半は社員だけでの懇親会。

ホテルでお高めの料理やお酒が振る舞われ、ビンゴ大会なんてものまである。


後半の懇親会は、本社の社員は基本的に全員参加で、私と梓ちゃんも毎年参加していた。


「夕方から家出るのってまあまあ面倒なのよね〜、普通に翌日も仕事だし。どうせなら休みにしてくれたらいいのに」


はあ、と不満そうな梓ちゃんに小さく笑う。


確かに、朝早く起きなくていいのは嬉しいけど、ドレスコードが必須だし、夜は遅いから疲れることに変わりはない。



< 172 / 392 >

この作品をシェア

pagetop