本気の恋を、教えてやるよ。



それを望んでいたはずなのに、いざそれが現実味を帯びてきたら捨てられるのが怖くなるなんて、都合がよすぎる。


本当に、優柔不断な自分が嫌になる……。


「……でも、最近さ」

「え?」


ポツリ、落とされた声に顔を上げる。


「いや、最近、筒井が他の女と居るところとか……そういう噂、見ないし聞かないなと思って」


まあそれが当たり前なんだけど。と苦笑いする梓ちゃんに、確かに、と思う。


「ま、筒井のことなんかどーでもいいけど」


不機嫌そうに吐き捨てる梓ちゃん。慶太も随分嫌われたもんだ。


梓ちゃんはテーブルに伏せていたスマホの画面を確認すると、「うーん、もうそろそろ戻らないと」と伸びをした。


昼休みの時間ってあっという間だな、と思いながら仕度をする。


「茉莉」

「ん?」

「茉莉から誘ったっていいんだからね、あいつのこと」


それが恐らく駒澤くんのことを指すんだろうなとは、すぐに分かった。



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