初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜



 狭いアパートで二人、失敗したハンバーグを笑いながら食べた。深夜、レポートの提出前で頭を抱える彼にコーヒーを入れた。雨の日に洗濯物を取り込み忘れた彼と喧嘩をした。仲直りをして一緒にお風呂に入った。小さなベッドでたくさんたくさん、セックスをした。


 半年間、降り積もる日々が宝物でしかなかった。


 ────なのに、なんだこれ。



「ねぇ、何で最近帰ってこないの?」
「だから、同じサークルの友達ん家に泊まって課題やってんだよ」
「いくらなんでもこれは」
「あー、もううるせぇな。母親かよ」



 ガチャンと玄関のドアが閉まり、一人取り残される。酷い湿気と激しい雨音がシンとした部屋に響き渡る。
 一週間ぶりに帰ってきた彼は私とは目を合わすことをせず、荷物を取りに来ただけだと言いそそくさと家を出て行った。


 彼が帰ってこない期間、連絡もほぼ取れず、心配で仕方がなかったのに。
 母親かよって、馬鹿にしてるのか。



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