もう一度、その声が聞きたかった【完結】
圭介は真剣に私の話を聞いてくれている。

『倉木さん、少し考える時間を取るのも
いいと思いますよ。
すぐに答えをだす必要はないと思います。』

「それは休職するということですか?」

『それも有りだと思いますし
お店から離れて本社勤務をしながら
心を休養する時間作って回復を待つみたいな。』

私は彼の話を聞いて考える。
私はずっと
どこかの店舗で働くか本社に入るかの
2択でしか考えていなかったのだ。

彼の提案に選択肢が広がる。
少し前向きに考えられそうな気がしてきた。

『あの、仕事の話と違うんですが
僕と倉木さんは仕事で初対面ですか?
なぜかずっと懐かしい感じがして。
もしかして僕が忘れてる期間に知り合ってたり
しませんか?』

「・・・・」

『倉木さん、僕が目覚める前に
圭介って呼んでませんか?
あなたの声で聞こえた気がしたし。
服や下着のサイズやセンスも僕好みだし。
それにこの指輪…』


圭介はこの何日の間になにかを感じとっている。
もう誤魔化せないかもしれない。

彼の記憶はいつ戻るか
もう戻らない可能性もある。

私はあと少しで大阪を去るし
全てを話すことにした。
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