もう一度、その声が聞きたかった【完結】
翌日の土曜日
21時を回ったころ、大阪に戻った。

家に帰る前に店に寄る。
本社から持ち帰ってきた
アクセサリの什器を置きにきたのだ。

遅番の勤務は20時半まで。

セキュリティを解除して
スタッフルームに入り什器を置く。

ふとデスクを見ると私宛の置き手紙。
遅番のスタッフからだった。

”倉木店長へ
お疲れ様です。
土曜日の夜、店長の知り合いという
田中様より荷物を預かりました。
確認お願いします。''

「田中…?誰だろう…?」

大阪に知り合いはいないし
取引先だと会社名を名乗るだろうし
私が担当してる取引先担当者に田中はいない。


私は置き手紙の横にある
小さな紙袋の中を確認する。

小さな箱と手紙。

まず手紙を読む。

''くらきさんへ
この前はお仕事中に失礼しました。
他のスタッフの目もあるし
受け取れませんよね。

見たら連絡ください。

000-0000-0000 田中''


気持ち悪さに体がブルっと震える。

震える手で箱を開けた。

「やっぱり…」

箱の中には見覚えのある巾着袋。
うちの店のアクセサリ用のラッピングだ。

以前、私に無理やり渡そうとしてきた
あの男だ。
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