日直当番【完結】
「どうしたんですか?部活にも行かずに成績表なんか握りしめて」

「別に」

「泣くほどテストの結果が悪かったんですか?」

「違う」

「じゃあ、なんで泣いているんですか?」

「泣いてないし」

 相手は椅子を引いてこちらに距離をつめてきた。

「こっち来ないでよ」

「顔、上げてください」

「嫌だ」

「上げてください」

「……」

 私は渋々顔を上げて、泣き顔を見られないように進藤くんに背を向けて座り直した。

彼はおもむろに立ち上がり、私のすぐ後ろに立って私の机の上に右手をついたのが見えた。左側からすっと手が伸びてきて、私の頬に流れる涙を親指でそっと拭われた。

「なんのつもりよ。てか、永井さんのところに行ったんじゃないの?」

「昼休みの彼女との会話、聞いてたんですね。気になるんですか?」

「うるさい」

「告白されました」


 ドクン。


「でも断りました」

「え?」

「僕には特別に思っている人がいるからです」

 彼は私の目の前に移動して体をかがめた。進藤くんは眼鏡の奥に優しい目を携えて私の目を捉えた。

「僕の中にこういう感情があることに驚きました。男女の機微というものには疎いのですが、僕はあなたのことを好いているのだと思います」

 真っ直ぐに私を下から見つめる目はいつになく真剣だ。急な展開に思考が追いつかない。私は気恥ずかしくて目を逸らしてしまう。
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