日直当番【完結】
「遅かったな神崎」

「何ブスくれてんの?」

 教室に戻ると由理と皆川が私の机の周りで喋っていた。私は皆川にココアを渡して事のいきさつをふたりに話した。

「むしろよかったじゃん。悩む手間省けて」

「そうだよ。神崎ってどうでもいいとこで優柔不断だもんな」

「だってさ、例えば今日の弁当は肉だからさっぱりした果物系のジュースがいいかなぁとか、パンのときはミルク系がいいかなぁとか考えない?選ぶという行為は私にとってある意味至福の時なの。それを私はあいつに奪われたの。分かる?この気持ち」

「「分かんない」」

 ふたりに真顔で即答されてちょっとヘコんだ。

「そうですか、ああそうですか。いいですよ分かんなくて」

「そう機嫌悪くすんなよ。一緒に食べようぜ」

「言われなくてもそのつもりです」

 私と皆川の机をくっつけて、私たちの席から少し離れている席の由理は椅子だけ持って来て3人で弁当を食べた。皆川は男女共にフレンドリーなやつなので、男子たちと一緒に食べるときもあればこうやって女子の中で食べるときもある。

「ねえ捺乃のその指どうしたの?」

「ああこれ?昨日あそこの割れたガラス片づけてたら切っちゃってさぁ」

「ダサ」

「ダサとか言うな。あいつも『ガラスの破片を手でかき集めたりしないでしょう?』とか言って馬鹿にすんだよ」

 ちょっと進藤くんのマネをして言ってみた。

「バカじゃん捺乃」

 軽く笑って卵焼きを食べながら由理が言った。
< 17 / 120 >

この作品をシェア

pagetop