後輩男子が極上に甘い。
「え、」
「おかげで午前中は1時間目から4時間目までしか集中できなかった」
「…ちゃんと全部集中してらっしゃる」
「んもう!ツッコミに覇気も無いっ!」
今日は快晴だ。全く記憶に残らなかった午前の授業が終わると、お弁当を持った瑠璃ちゃんが中庭で食べようと誘ってくれた。
…瑠璃ちゃんの機転と配慮もあるのだと思う。周囲の人に聞かれないようにしたい会話内容に、広い中庭はぴったりなのだ。
「怜央くんと悠飛くんに、なんにも言わないで来ちゃったよ…?」
「それは今日一番どうでもいいこと。ガールズトークだから邪魔しないでって言っておいたの」
「…さすが瑠璃様…」
「ふふ、お礼は一日杏花を独占できる権利でお願いします」
上品な佇まいのもと、微笑んだ瑠璃ちゃんが卵焼きを口にする。
わたしもお母さんお手製の混ぜご飯を一口。ぼんやりしていたのが嘘のように、身体中に旨味が染みわたっていった気がした。
「どう?彼が来た同居生活は」
「っ、」
――…“俺がかっこいいから、その可愛い声が出たんだ?”
――…“やーだ。言わなかったら杏花さん、俺のこと意識しねぇもん”
――…“俺、ずっと杏花さんしか見てねぇから”