ゆるふわな君の好きなひと

 由利くんの視線はまだ、眞部くんの姿を探して右へ左へとゆっくりと動いている。


「晴太ね、ちょっと体調悪いみたい」   

 璃美がそう言うと、由利くんが「え?」と少し口を開けて動きを止めた。


「朝、学校来る途中に、なんかダルくて気分悪いって言ってたでしょ。それが全然治らなくて、昼休みもあんまり食欲なかったみたい。さっき無理やり保健室連れてって熱計ったら、37度超えてた。だから、先に帰らせた」

「そうなんだ。眞部くん、大丈夫? 璃美がついて帰ってあげなくてよかったの?」  

 風邪なんて無縁に思えるくらい、いつも溌剌としている眞部くんが体調不良なんて……。ひどい風邪じゃないといいけど。


「付き添うほど重症ではなさそうだったから、大丈夫。それよりも、由利くんをちゃんと部活に引っ張り出しといてって頼まれちゃったよ。俺が迎えに行かなかったら絶対サボるから、って。体調悪いくせに由利くんの心配するとか、晴太もほんと過保護だよね」  

 璃美が呆れ顔で苦笑いする。


「それ、もっと早く教えてよ。晴太が帰るなら、おれが家まで付き添ったのに」

「そうやって部活サボるのわかってるから、晴太はわたしに由利くんを呼びに来させたんだよ。由利くん、ふつーに上手いんだから、マジメに参加しなよね」  

 眉根を寄せて由利くんを諭す璃美の表情やおせっかい具合が、眞部くんに似ている。

 付き合ううちに似てきたのかな。だとしたら、なんか微笑ましい。

 怒られてる由利くんには悪いけど……。  

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