ゆるふわな君の好きなひと

 学校で直接顔を合わせれば、うまく話せるかもしれない。

 案外何事もなかったみたいに、由利くんのほうから笑いかけてくるかもしれない。

 そんなふうに甘く考えていたけど、この調子だと由利くんから声をかけてもらえることはなさそうだ。


「おはよう」

 数学の授業が終わったあと、後ろから近付いて声をかけると、机に伏せて寝ていた由利くんが、ゆっくりと顔をあげた。


「遅刻、珍しいね。今日は眞部くんたちと一緒じゃなかったの?」

 当たり障りない会話で様子を窺ってから、ふたりだけで話せるところに行って謝ろう。

 そう思って頑張って笑いかけたら、由利くんが冷たい目でわたしを見上げてきた。


「ふつうに話しかけてくると思わなかったんだけど」

 目をすがめた由利くんが、フッと嘲笑する。

 その表情が昨日までの彼と違いすぎて、顔に張り付けていた笑顔が凍り付いた。

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