幼なじみが愛をささやくようになるまで〜横取りなんてさせてたまるか〜
翌朝、お母さんが珍しく起こしにきた。
社会人になって起こしにくることは一度もなかったのに珍しいなと思って時間を確認するとすでに11時を過ぎていた。

「ひまり?まだ寝てるの?お隣の楓ちゃんがきてるけど」

「え?」

私は慌てて身体を起こすが今は話したくない。

「お母さん、調子悪いから帰ってもらって。もう少し寝てていい?」

ドア越しにそう伝えると心配そうに声をかけてきたが、もう少し寝たら大丈夫だと伝え私は顔も出さなかった。
楓ちゃんには悪いけど当分話したくない。
私はまた布団の中でゴロゴロして、時間が経つのをぼうっと過ごした。

お昼を過ぎると流石に喉も乾いてきた。
私は渋々1階へ降りるとお母さんは買い物に出かけてしまったのかリビングにいなかった。
私は置いてあったサンドウィッチを食べながら紅茶をいれた。
お腹が満たされ、シャワーを浴びて鏡を見ると目の周りは腫れぼったく泣いたと分かる顔だった。
ため息をつきつつ冷凍庫から保冷剤を出し、タオルに巻いて目に当てながら自室へ戻った。
やっとスマホの電源を入れる気になり放り投げてあったスマホを手に取る。
電源を入れるとメッセージが30件もきていた。
友達からの物から確認し、返信をした。
町屋さんからもきており、私はまたご馳走になってしまったのに昨日のうちにお礼を言えずにいたことに気がつき慌ててメッセージを送った。するとすぐに既読がつくと返事がないので心配していたと書かれていた。謝るメッセージを送るとまたすぐに返信が届いた。

【昨日駅で会った人と何かあった? お兄さんではないんだよね?】

【大丈夫です。彼は幼馴染でお兄ちゃんみたいなものです】

【お兄ちゃんみたいな人ならきっと俺といて驚かれたんだろう。また一緒に食事に行ってくれると嬉しいよ】

町屋さんだって昨日の楓ちゃんの態度に思うところはあったはず。それでも何も言わずにまた私を食事に誘ってくれるなんて嬉しい。
町屋さんは私の心の奥底をくすぐるように優しくしてくれる。こんな優しい彼を楓ちゃんに悪く言われたくない。

【また是非ご一緒させてください。本当に次はご馳走様させてくださいね】

そう返信して会話は終わった。
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